
作詞/作曲/編曲: Roasted Dice Studio
配信日: 2026年10月18日
六時五分のチャイムが ビルの隙間に溶けていく
片付いたデスクに カバンをひとつ引っ掛けて
「じゃ、先に帰るわ」って 軽く上げた右の手
あの背中を追いかけて 冷めたコーヒーを飲み干した
「いつでもいいよ」と笑う 優しい顔したその声は
終わりなき夜へと誘う 一番甘い呪いだと
いつか誰かが言っていた カレンダーの空白に
赤いペンで刻むリミット 今日を終わらせるために
聞くのはたったの三秒 ひとりで迷えば三年さ
キーボード叩く指が どんなに忙しそうでも
踏み出せよ ドアをノックする音を恐れるな
十年前の正解なんて とうに賞味期限切れ
抱え込んだミスは ヴィンテージワインじゃない
寝かせた分だけ 重たい利子が膨らむだけ
言い訳のカードはポケットの奥へしまって
まずは「すみません」から 理由は聞かれてからでいい
「お前ひとりが転んだくらいで この船は沈みはしない」
あの日もらった処方箋 ため息をふっと吹き飛ばす
お前のミスは俺のミス 俺の手柄はお前のもの
軽やかに笑い飛ばして 肩を叩いてくれた手
「無理です」と唇を噛む夜も
「できる」と自分で言えるその日まで
何度でも俺が言ってやるよと 呆れるほどの諦めの悪さで
背中を押してくれた あの不器用な優しさを
グラスの氷が鳴らす音に ふと思い出している
月日は巡り 時計の針は静かに進んで
あの頃のあの人の歳を いつの間にか追い越していた
オフィスの窓に映る影 ネクタイを少し緩めて
デスクの向こう 不安げに俯く誰かを見る
「お前のミスは俺のミス 俺の手柄はお前が持っていけ」
今度は僕の口から あの言葉を渡せているだろうか
二十年後の交差点 信号待ちの横顔
あの日見上げたあの背中に 少しは近づけているかい?
片付けたデスクに そっと明日の明かりを灯して
「じゃ、お先に」と手を振る帰り道
夜風が少しだけ 心地よく頬を撫でていく


